目だけではなく耳でも術野を見よう!
「ちゃんと術野をみなさい」
器械出しつきたての頃や慣れない手術につくときに、先輩や外科医からこういったことをよく注意されるのではないでしょうか?
(ちゃんとみてるじゃん…)
と反論したくなることもあると思いますが、その先輩が言う
「術野をみる」
とはどのようなことを意味するのか、説明していきたいと思います。
【目で見るだけではダメ】
先輩の言う「術野をみなさい」は、詳しく言うと「術野で行われていることを目で見て耳で聞いて自分で考え手術の進行具合を把握し次にいるものを予測しながらつきなさい」という意味です。
術野を目でしっかり見ているつもりでも、助手の先生が邪魔になったり術野が深すぎて見えないこともあると思います。
または、器械カウントをするためにどうしても術野から目を離さなければならないこともあります。
そういった時は耳を使って術野をみるのです!!
はさみで切る音や電気メスで焼く音、外科医同士の話し声等音には術野の状況を把握するためのヒントがたくさんあるので、耳で得られる情報を大切にしましょう!!
【常に次必要な物を予測しながらつく】
外科医に言われるがままに物を渡すのは正直素人でも誰でもできます。
言われてから準備をするようでは、大きな手術についたときペースについていけなくなります。もっと言えば、手術時間を延長してしまう原因にもなってしまいます。
手術の流れを頭に入れておき、予測しながら器械出しにつけて初めてプロと言えるのではないでしょうか。
術野を目で見て、耳で聞いて得られた情報をもとに、自分の頭で次必要な物を考える癖をつけましょう。
毎回受け身の姿勢で器械出しするのではなく、次の段階で必要になるであろう物を積極的に医師に確認するようにしましょう。
タイミングが早すぎると「ちょっと待って」と言われることもあるかもしれませんが、いちいちヘコまず次に活かすようにしていれば、後々タイミングがわかるようになってきます。
予測しながら積極的に手術に関わる方が断然やりがいがありますよ☺️
見ているつもりなのに先輩や外科医から「ちゃんと術野をみなさい」と言われる意味がわかったでしょうか??
今後今よりもっと複雑な手術についていくと思います。
その時のために、術野で行われていることを目で見て耳で聞いて自分で考え手術の進行具合を把握し次にいるものを予測しながらつく癖をつけておいてください。
器械出しとして最も重要なこと2点目!!!!
器械出しとして最も重要なこと2点目です。
それは、他スタッフとのコミュニケーションです!!
器械出しは清潔野で清潔な物品にしか触れることができないため、できることに制限があります。その手術に何が必要かを確認し、必要なものを他の誰かに出してもらわなければなりません。
医師や外回り看護師など他スタッフに声をかけれずうじうじしていては、必要なものを準備できないまま手術が始まってしまうことになります。
そうすると、手術の進行が滞り器械出しのせいで手術時間が延長してしまうのです。
【医師とのコミュニケーション】
手術症例ごとに必要な器械・物品・薬剤等はある程度決められていると思います。
しかし、患者さんの病態や体格、執刀医の好み(他には医師と業者との兼ね合いなど…😓)等で毎回同じものが必要となるかはわかりません。
薬剤に関しては看護師は自分で処方することはできないので、毎回医師への確認が必要となります。
また、前回の記事にも書いたように手術の内容が自分の把握しているものと一致しているかの確認も行っていください。手術が始まる前に!
医師によってはこちらから働きかけないと何も教えてくれない人もいます。
さらには、「いつも通りでいいよ」「なんで毎回確認してくるの?」「やることは一緒なんだから、わざわざ聞いてこないでよ」
とつっぱねられることもあるかもしれません。もちろんそんな人は少数だと思いたいですが…。
それでも、必ず確認しなければならないことは嫌な顔をされたとしても確認してください!!
それが患者さんのためになるのですから!!
「嫌な顔をされたらどうしよう」「こんなこと聞いて怒られないかな」
となる気持ちは痛いほどわかります。でもこれって結局のところ自分が怒られたくないだけ。厳しいようですが、自分の保身のためですよね?
特に新人のときはとんちんかんなことを聞いてしまうこともあると思います。でも、年数を重ねれば確認することの取捨選択ができるようになります。
自分の保身<患者さんの安全
ということを頭に入れておいてください!!
手術中には、針糸等手術の段階に応じた必要物品が出てくると思います。タイミングよく聞かないと医師も答えられませんので、手術の進行を把握して聞くようにしてください。進行を把握できるためには手順を知っておかないといけないので、必ず手術が始まるまでに手術の手順をしっかり頭に入れておいてください!
【外回り看護師とのコミュニケーション】
私のいた病院では外回りに先輩がつくことが多かったので、その場合を想定して書いていきます。
まず、その日初めて顔を合わせるときにあいさつだけで終わっていませんか?
あいさつすらできない人もいますが…😒
同じ患者さんを担当する身として、患者さんの情報共有をするようにしましょう!
例えば、アレルギーの有無や術式の確認などなど。情報の漏れがあるかもしれないので…。
そして、初めてつく症例の場合やまだ自信が無い場合は教えてください!
スタッフの人数にもよると思いますが、後輩がどこまでできるのかすべて把握することは難しいです。自分が今どの程度の器械出しができるのか一番わかっているのは自分自身なので、そこも情報共有してください。
上記に書いたように医師への必要物品・術式の確認ができたら、外回りにも伝えてください。余裕がある人だと、器械出しが聞いてるときに耳を傾けてくれる人もいますが、そういう人ばかりでもないので😓
もちろん、気管挿管介助の時などタイミングが悪いと聞いてもらないので、状況を伺ってから声をかけてくださいね。
手術中〜手術終了の間、外回りが先輩だとカウントのタイミングなど先回りして教えてくれるかもしれまでんが、自分で考えて主体的に働きかけるようにしてください!
偉そうに書いてきましたが、私自身もコミュニケーションをとるのが苦手なタイプで苦労してきました。でも、自分の保身<患者さんの安全と先輩に言われてから勇気を出して周りに働きかけるように心がけました。
生まれもってのコミュニケーションの上手い下手はあるかもしれません。しかし、患者さんに対する誠実さをもっていれば必ず認めてもらえる日が来ます!
オペ室はチームワークが重要な部署なので、チームの一因として(もちろんいい意味での)存在感を出していきましょう!!
器械出しとして最も重要なこと1点目!!!!
いろいろ細かいコツを書く前に最も重要なことを2点教えます。
まず1点目は、どのような患者さんにどのような手術をするか把握することです!!
は?当たり前じゃん
と思われた方は多いと思います。
しかし、経験上これができていない若手が多いのです…。
手術をするためにはまず医師からの手術申し込みがあります。申し込みの受け取りが完了したら手術指示録に手術術式がのり、それを参考に看護師は準備をします。
例えば、「乳房切除術」「頸部郭清術」「帝王切開術」等の主な術式が記載されていますよね?そこだけを見て準備していませんか??
「乳房切除術」ひとつとっても患者さんの疾患や要望に応じて色々な種類の手術があります。
乳房全体を切除するのか?
部分的に切除するのか?
センチネルリンパ節の郭清はするのか?生検するのか?
乳房の再建は希望しているか?
「帝王切開術」については
卵管結紮を希望しているか?
大量出血のリスク因子がないか?
子宮の止血ができなければ子宮摘出術が追加になることも…
手術指示録に記載されている場合もありますが、記載されていない隠された術式がある場合があるのです!!
そのため、自分が担当する患者さんのカルテは必ず読んで患者さんの状態や手術の方針を把握しておいてください!わからないことがあれば、先輩や担当の医師に聞いてください!
その癖がついたらより大きな手術につく時に絶対に役に立ちます!
というより、それをしないまま年数だけ重ねてしまうと絶対に失敗するときがきます!
オペ室での勤務はどうしても同じことの繰り返しに思えてしまうかもしれません。
しかし、患者さんやご家族にとって手術は一生に一度かもしれない、命をかけた一大事です。
患者さんを守るためにも毎回責任をもって担当するようにしてください。
2点目は次の記事になりますので、ぜひ一読ください。
はじめまして。器械出しへの思いを徒然と…
オペ室看護師略してオペ看歴7年目のうさぎたろうと申します。
そこそこ大きな病院に勤め、様々な手術の介助を経験してきました。
その経験を活かし、思いついたままに器械出しのコツを書いていきたいと思います。
まずは、私の器械出しへの思いを書かせてください。
【オペ看のイメージ】
「ドラマで外科医にメス渡してる人でしょ?」
医療者でない人だけでなく、オペ室以外の場で勤務している看護師にも言われます。笑
オペ看には大きく分けて「外回り看護師(間介)」と「器械出し看護師(直介)」の2種類があります。清潔なガウンと手袋をまとい外科医にメスを渡しているのは「器械出し看護師」です。滅菌物にしか触れてはいけない器械出し看護師や外科医の代わりに、滅菌物を出したり直接患者さんの介助をするのが外回り看護師の役割です。
私もそうでしたが、学生のときのオペ室看護師に特化した授業は少なく印象に残るものではありませんでした。実習でも1日か2日見学をするだけで実際どのような仕事をしているのかはっきりとはわかりません。(学校や病院によっては実際に滅菌ガウンを着て近くで手術をみることができるところもあります。)
つまり、オペ室配属にならない限り一生その実態がわからないのです。
【オペ看といえば器械出し】
オペ室はほとんどの看護師にとって未知の領域であり、その中でも器械出しは特殊な技能や知識が必要となるため一朝一夕でできるものではありません。
手術で使う器械・物品の準備やカウント、外科医への受け渡しを行っているため、手術が円滑に進むかどうかは器械出しの力が大きく影響してきます。
様々な思いを抱え手術を受けにくる患者さんやその家族の一番の願いは手術が無事に問題なく終了することだと思います。それに直接影響を与える器械出しはとてもやりがいのある看護ではないでしょうか?
ある程度以上経験年数を積んでいくと、外回りをしながら後輩の指導をすることやマネジメントの仕事をすることが多くなるので器械出しをする機会は減っていきます。
しかし、自身が器械出しをすることができないと後輩に的確な指導をすることは難しく、外回りやマネジメント役としてもうまく動くことができません。
もちろん外回りやその他の役割も手術に大きな影響を与えるなくてはならない一因ではありますが、その土台には器械出しとしての経験値が非常に重要になってくるのです。
【当ブログでやりたいこと】
これから様々な手術の器械出しにつく方にちょっとでも参考になれるよう、参考書にはのっていないような小さなことも含め、リアルな経験をもとにした「器械出しのコツ」を書いていきたいと思います。
よろしくお願いします!!